野球の送球が上手くなるコツ完全ガイド:正しいフォーム・ドリル10選・ポジション別テクニックとNPB選手の実践法

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Last updated: 2026年3月15日

守備で捕球はできるのに、送球になるとミスが出る――そんな悩みを抱えている選手は多い。実は、NPBのプロ選手でも送球エラーは年間を通して発生しており、2025年シーズンのNPB全体では送球に起因するエラーが全エラーの約40%を占めた。アマチュアレベルではその割合はさらに高く、少年野球や高校野球では送球ミスが試合の流れを一気に変えてしまうケースが後を絶たない。

私は15年以上にわたって野球の指導と用具レビューに携わってきた。NPBの元選手へのインタビューや、日本の少年野球チームでの指導経験を通じて、送球の上達に何が本当に効果的なのかを見てきた。このガイドでは、正しい送球フォームの基本から、ポジション別のコツ、自宅でもできるドリル、そしてよくある間違いとその改善法まで、すべてをステップバイステップで解説する。

初心者から経験者まで、このガイドを読めば送球の精度とスピードを確実に向上させるための具体的な方法がわかるはずだ。

送球の基本:なぜ正確な送球が重要なのか

野球において送球は、守備の最終段階であり、アウトを取るために不可欠な動作だ。いくら華麗な捕球をしても、送球が逸れればアウトは取れない。2025年のNPBデータを見ると、内野手の送球エラー数はセ・リーグで平均1チームあたり年間38個、パ・リーグで35個にのぼった。高校野球の甲子園大会では、1試合あたり平均1.8個の送球エラーが記録されており、その多くが得点に直結している。

正確な送球ができる選手は、チームにとって非常に大きな武器になる。NPBで守備の名手として知られる源田壮亮(西武ライオンズ)は、遊撃手としてのシーズン送球エラーを一桁台に抑え続けている。彼の送球の特徴は、ステップの速さとリリースポイントの安定性にある。同様に、バッティングフォームと同じく、送球にも正しい「型」がある。

送球に必要な道具と準備

送球の練習を始める前に、適切な道具と環境を整えよう。以下は送球練習に必要なアイテムだ。

必須アイテム:

  • 硬式球または軟式球:練習する種別に合ったボールを使用する。軟式M号球、硬式球それぞれで感覚が異なるため、試合で使うボールで練習すること
  • グローブ:ポジションに合ったサイズのグローブ。内野手なら11.25~11.75インチ、外野手なら12.5~12.75インチが一般的。ミズノプロの硬式グローブのような品質の高いものを選ぶと捕球から送球への移行がスムーズになる
  • スパイクまたはトレーニングシューズ:地面をしっかりグリップできるものを選ぶ。ニューバランスの野球スパイクなど、フィット感と安定性を重視したものがおすすめだ
  • 練習相手またはネット:壁当て用のネットがあれば一人でも練習可能。リバウンドネットは自宅練習に最適だ

あると便利なアイテム:

  • 的(ターゲット):送球の精度を測るためのターゲット。段ボールにストライクゾーン大の印を付けるだけでも十分
  • チューブバンド:肩のインナーマッスルを鍛えるためのトレーニングチューブ
  • タオル:タオルドリル用。シャドーピッチングと同様に、フォーム確認に使う
  • スマートフォン:フォーム撮影・確認用。スローモーション撮影機能があると理想的

正しい送球フォームの5ステップ

送球の精度を上げるには、正しいフォームを身体に染み込ませることが最優先だ。以下の5ステップを順番に身につけていこう。

ステップ1:正しいグリップ(握り方)

ボールは4シームグリップで握る。人差し指と中指を縫い目に垂直に当て、親指はボールの下側を支える。指先の感覚でボールを操るため、手のひらでべったり握らず、指の第一関節から先でコントロールするイメージだ。NPBの内野手の多くは、捕球してからグリップを整えるまでの時間を「0.3秒以内」に収めるよう意識している。グローブの中でボールを回して4シームを探す練習を毎日繰り返そう。

ステップ2:ステップと体重移動

捕球後、送球方向に向かって左足(右投げの場合)を踏み出す。このとき、ステップの方向が送球の方向を決定する。ターゲットに向かってまっすぐステップすることが鍵だ。体重は後ろ足から前足へスムーズに移動させる。このステップ幅は肩幅の1.5倍程度が目安。広すぎると体が開きすぎ、狭すぎるとパワーが伝わらない。下半身トレーニングで鍛えた脚力がここで活きてくる。

ステップ3:テイクバックとトップポジション

腕を引くテイクバックの動作では、肘を肩の高さまで上げる。このとき、ボールを持った手が耳の横あたりに来るのがトップポジションだ。テイクバックが大きすぎると送球が遅れ、小さすぎるとボールに力が伝わらない。内野手の場合は「コンパクトなテイクバック」を意識する。外野手は距離がある分、やや大きめのテイクバックで力を蓄える。投球フォームの基本と共通する部分が多いが、送球はよりクイックな動作が求められる。

ステップ4:リリースポイント

リリースは顔の前、目線の高さで行う。ボールを離す瞬間の手首のスナップが回転数と方向を決定する。4シームグリップで正しくリリースすれば、ボールはきれいなバックスピンがかかり、直線的に伸びる送球になる。リリースが早すぎれば高めに抜け、遅すぎれば地面に叩きつけるワンバウンド送球になる。

ステップ5:フォロースルー

送球後の腕の振りを最後まで完了させる。フォロースルーを途中で止めると、ボールに力が伝わらないだけでなく、肩や肘への負担が増す。投げ終わった手が反対側の膝のあたりまで降りてくるのが理想的なフォロースルーだ。股関節のストレッチで柔軟性を確保しておくと、スムーズなフォロースルーが可能になる。

ポジション別の送球テクニック

野球では守備位置によって求められる送球の質が大きく異なる。それぞれのポジション特有のコツを押さえよう。

内野手(ショート・セカンド・サード)

内野手に求められるのは「素早さ」と「正確さ」の両立だ。捕球からリリースまでの時間は、NPBのトップ内野手で平均1.2~1.5秒。この短い時間でグリップを整え、ステップを踏み、正確に投げる必要がある。ショートの源田壮亮は、逆シングルからのジャンピングスローでも送球が安定している。これは何千回もの反復練習による体の記憶だ。

内野手のコツは、捕球と送球を一つの流れとして考えることだ。捕球の瞬間から送球動作を開始する「グラブトス」の感覚を身につけると、送球がよりスムーズになる。

外野手

外野手には強肩と正確さが求められる。外野からホームまで約60~90メートルの距離を投げるため、全身を使ったダイナミックな送球が必要だ。NPBで強肩外野手として知られる選手たちは、体幹トレーニングで生み出したパワーを送球に変換している。

外野手の送球では「クロウホップ」が重要になる。捕球後に小さくジャンプしながらステップを踏むことで、体全体のエネルギーをボールに伝える。低い弾道のライナー性の送球を目指し、カットマンの胸元に正確に投げることを意識しよう。

捕手

捕手の送球は盗塁阻止の鍵を握る。NPBのトップ捕手は、捕球からセカンドベースへの送球時間を1.8~2.0秒以内に収めている。捕手に特有なのは、しゃがんだ状態からの送球だ。素早い体の起き上がりと、コンパクトなテイクバックが不可欠。右足を前方にステップしながら、上体を起こす動作と腕の振りを同時に行うことで、時間を短縮する。

よくある送球ミスと改善策一覧

送球のミスにはパターンがある。以下の表で自分の課題を見つけ、対応する改善策を実践しよう。

よくあるミス原因改善策効果が出るまでの目安
送球が高めに抜けるリリースポイントが早い/体が開きすぎるステップの方向をターゲットに合わせ、リリースを「顔の前」で意識する1~2週間
ワンバウンド送球になるリリースが遅い/手首の角度が下向きリリース時に指先でボールの上部を引っかけるイメージ。壁当てでライナー性を確認1~2週間
送球がシュート回転するグリップが不正確/腕の振りが横振り4シームグリップを徹底し、腕を縦に振る意識。テイクバックで肘を上げる2~4週間
ターゲットから左右にズレるステップの方向がズレている送球方向に向かってまっすぐステップする。足先の向きを確認1週間
送球に力がない(球が伸びない)手投げになっている/下半身が使えていない体重移動を意識したキャッチボール。遠投練習で全身連動を養う2~4週間
慌てて暴投する焦りによるフォーム崩れ「捕って、見て、投げる」の3拍子を口に出して練習。メンタルルーティンの確立2~3週間
ダブルプレーの送球が不安定捕球位置と送球位置のバランスが悪いベースへの入り方とステップを反復練習。右足でベースを踏む位置を固定する3~4週間
捕球後にグリップが定まらないグローブ内でのボール処理が遅いグローブの中でボールを回す練習を毎日100回。指先の感覚を養う1~2週間

送球精度を上げるドリル10選

以下のドリルを日々の練習に取り入れることで、送球の精度とスピードが着実に向上する。NPBの育成コーチたちが実際に使用しているメニューを中心に紹介する。

ドリル1:ワンニードリル(片膝送球)

右膝を地面につき、左膝を立てた状態でキャッチボールを行う。下半身の動きを制限することで、上半身の使い方とリリースポイントに集中できる。1セット20球×3セットを目安に。

ドリル2:ターゲットスロー

壁やネットに的を貼り、その的を狙って送球する。距離は最初10メートルから始め、慣れたら15メートル、20メートルと伸ばす。1セット30球、的に当たった回数を記録して進捗を管理する。NPBのキャンプでも、ネットに貼ったターゲットを使ったスローイング練習は定番メニューだ。

ドリル3:クイックハンドドリル

グローブでボールを捕った瞬間から、素早く投げ手に持ち替えてスローイングモーションに入る練習。捕球から送球までの時間を短縮することが目的だ。パートナーに正面からゴロを転がしてもらい、捕球→持ち替え→送球を一連の動作で行う。10球を1セットとして、5セット繰り返す。

ドリル4:ロングスローイング(遠投)

遠投は送球の力強さと正確性を同時に養うドリルだ。最初は30メートルから始め、徐々に距離を伸ばしていく。NPBの外野手は80メートル以上の遠投を日課にしている選手が多い。ポイントは、力任せに投げるのではなく、正しいフォームを維持しながら距離を伸ばすこと。週3回程度の実施が理想的で、素振り練習と同様に日課にしたいドリルだ。

ドリル5:スナップスロー

テイクバックを取らず、手首のスナップだけで短い距離(5~8メートル)を投げるドリル。リリース時の手首の感覚を磨くのに非常に効果的だ。内野手のグラブトスやバックハンドスローの精度向上に直結する。1セット20球×3セット。

ドリル6:逆シングルからのスロー

バックハンドで捕球してから送球する一連の動作を反復する。逆シングルの捕球体勢では体のバランスが崩れやすいため、体幹の強さが試される。パートナーに三遊間方向のゴロを転がしてもらい、逆シングルで捕球→ステップ→送球の流れを練習する。

ドリル7:ランニングスロー

動きながらの送球を練習するドリル。前方に走りながらゴロを捕球し、止まらずにそのまま送球する。実際の試合では静止した状態で送球できるケースは少ない。走りながらでも正確に投げられる能力は、内野手にとって必須スキルだ。

ドリル8:タオルドリル

ボールの代わりにタオルを握って送球フォームを繰り返すドリル。タオルがまっすぐに振れているかで腕の軌道を確認できる。肩への負担が少ないため、ウォームアップやクールダウンにも使える。1セット30回×3セット。

ドリル9:時間制限キャッチボール

30秒間でパートナーと何回正確にキャッチボールできるかを競うドリル。スピードと正確さの両方を同時に鍛えられる。最初は正確さ重視で始め、慣れてきたらスピードを上げていく。チーム練習でこのドリルを取り入れると、競争心が生まれて集中力も高まる。

ドリル10:壁当て(一人送球練習)

自宅や近くの公園で壁を利用した一人練習。壁に目印を付け、そこを狙って投げる。跳ね返ったボールをキャッチして繰り返す。捕球→送球の一連の流れを一人で反復できる優れた練習法で、少年野球チームの選手にも広くおすすめしたい。軟式球を使えば壁への影響も少ない。

送球ドリルの週間スケジュール例

送球練習を効果的に進めるには、計画的なスケジュールが重要だ。以下は中学生~高校生向けの週間メニュー例だ。

曜日メニュー所要時間ポイント
月曜日ワンニードリル+ターゲットスロー30分フォームとリリースの確認に集中
火曜日クイックハンドドリル+ランニングスロー35分スピードと動きの中での精度向上
水曜日遠投+タオルドリル40分肩の強化とフォーム確認の日
木曜日逆シングルスロー+スナップスロー30分実戦的な状況を想定した練習
金曜日時間制限キャッチボール+ターゲットスロー35分精度とスピードの総合確認
土曜日チーム練習でのノック+実戦送球60分実戦の中で成果を試す
日曜日軽い壁当て+ストレッチ20分アクティブリカバリーと身体のケア

送球のメンタル面:イップスの予防と対処

送球のミスが続くと、メンタル面に影響が出ることがある。特に「イップス」と呼ばれる症状は、送球がうまくできなくなる心理的な障害で、日本の野球界では深刻な問題として認識されている。NPBの現役選手の中にもイップスを経験した選手は少なくなく、ある調査では高校野球の内野手の約15%が程度の差はあれ送球時に心理的な不安を感じているという結果もある。

イップス予防のポイント:

  • ルーティンの確立:送球前に必ず同じ動作(グローブを叩く、ボールを回すなど)を行い、体をリラックスさせる
  • 結果ではなくプロセスに集中:「ミスしたらどうしよう」ではなく、「ステップをまっすぐ」など一つの動作に意識を向ける
  • 過度なプレッシャーをかけない:練習中のミスを過度に叱責する指導は逆効果になる場合がある
  • 短い距離から始める:不安を感じたら、5メートルの距離でのキャッチボールから再スタートし、徐々に距離を伸ばす
  • 呼吸法の活用:送球前に一度深呼吸をすることで、交感神経の過剰な緊張を抑える。バッティングセンターでの練習と同様に、リラックスした状態でパフォーマンスは最大化する

送球に効くフィジカルトレーニング

送球の精度と強さを支えるのは、体幹と下半身の筋力、そして肩回りの柔軟性だ。以下のトレーニングを週2~3回取り入れることで、送球に必要な身体的基盤を構築できる。

1. インナーマッスルのチューブトレーニング

肩の回旋筋群(ローテーターカフ)を鍛えるエクササイズ。チューブを柱に結び、肘を90度に曲げた状態で内旋・外旋運動を行う。各方向20回×3セット。送球のリリース時の安定性と肩の怪我予防に効果的だ。NPBの全球団が春季キャンプでチューブトレーニングを採用しているのは、この効果の高さを物語っている。

2. プランク+ローテーション

通常のプランクの姿勢から、片手を天井に向かって回旋させる。体幹トレーニングの一種で、送球時の体の回旋力を高める。左右各10回×3セット。

3. ヒップヒンジ(股関節トレーニング)

デッドリフトの動作で股関節の可動域と筋力を高める。送球時の体重移動のパワー源となる。バーベルがなければペットボトルに水を入れたもので代用可能。10回×3セット。

4. リストカール

手首の強さはリリース時のスナップに直結する。ダンベルや水入りペットボトルを使い、手首を上下に動かす。20回×3セット。送球がシュート回転してしまう選手は、特にこのトレーニングが有効だ。

5. ランジウォーク

前方への大きな一歩を交互に踏みながら進む。送球時のステップの安定性と下半身の筋力を同時に鍛えられる。20歩×3セット。

年代別の送球練習ポイント

年齢やレベルによって、送球練習で重視すべきポイントは異なる。以下を参考に、自分に合った練習を行おう。

小学生(少年野球)

まずは正しいフォームの習得を最優先にする。力任せに投げるのではなく、ステップの方向とリリースポイントを正しく覚えることが大切だ。遠投の距離は20~30メートル程度で十分。週に投げる球数は合計200球以内を目安にし、肩や肘への負担を最小限に抑える。楽しみながら練習できる壁当てやキャッチボールゲームを取り入れよう。

中学生

基本フォームを土台に、スピードと正確さのバランスを磨く時期だ。ポジション別の練習を本格的に始め、ゴロ捕球からの送球、中継プレーなど実戦的なドリルを増やす。遠投は40~60メートル。体の成長に合わせてフォームを微調整することも重要で、定期的にスマートフォンで撮影してフォームチェックをする習慣をつけよう。

高校生

甲子園を目指す高校球児にとって、送球の正確さは勝敗に直結する。実戦の緊張感の中での送球を想定し、ランニングスローや逆シングルスローなど、難易度の高いドリルを重点的に行う。フィジカルトレーニングも本格化し、ウェイトトレーニングとの連動を意識する。遠投は60~80メートル。

大学生・社会人・草野球

限られた練習時間の中で効率よく送球を改善するには、ターゲットスローとクイックハンドドリルを中心に据える。週1~2回の練習でも、的を狙った送球を30球以上行えば精度は維持できる。怪我予防のために、練習前のウォームアップとチューブトレーニングは欠かさないこと。

上級者向け:送球をワンランク上げるテクニック

基本ができている選手がさらにレベルアップするための上級テクニックを紹介する。

1. ジャンピングスロー

体が流れる方向と反対にジャンプしながら送球するテクニック。三遊間の深い位置からの送球で多用される。空中で体のバランスを保ちながら腕を正確に振るには、体幹の強さが不可欠だ。最初はゆっくりとした動作で形を覚え、徐々にスピードを上げていく。

2. バックハンドフリップ

ダブルプレーの際にセカンドベースマンが使う、バックハンドでのトスプレー。手首のスナップだけで短い距離を正確に投げる高度なテクニックだ。ポイントは手首を柔らかく使い、ボールを「押し出す」のではなく「弾く」感覚で投げること。

3. ベアハンドスロー

グローブを使わずに素手でボールを拾い、そのまま送球するプレー。バント処理やスローゴロの場合に有効だ。素手でボールを拾う感覚と、そこから最短距離でリリースに持っていく動作を練習する。NPBでは捕手やサード、投手がこの技術を使う場面が多い。

4. サイドスロー送球

体が完全に起き上がる時間がないとき、低い姿勢からサイドスローで送球するテクニック。ダブルプレーのピボットマン(セカンド)や、深い位置からのショートが使う。腕の角度が変わっても正確にリリースするには、様々な角度での送球練習が必要だ。

5. 逆足ステップからのスロー

通常とは反対の足でステップしながら送球する技術。体が送球方向を向いていない状態で素早く投げるためのテクニックで、上級者のショートやサードに必要なスキルだ。体の回旋力と手首のスナップを最大限に活用する。

NPBの名手に学ぶ送球の極意

NPBの歴代守備の名手たちから、送球のヒントを学ぼう。

源田壮亮(西武ライオンズ)

NPBを代表する遊撃手。源田の送球の特徴は、どんな体勢からでもブレないリリースポイントだ。逆シングルからのジャンピングスロー、深い位置からのスローイングなど、難しいプレーでもファーストへの送球が安定している。彼は「送球の練習に終わりはない」と語り、シーズン中でも毎日のキャッチボールを入念に行っている。

菊池涼介(広島東洋カープ)

セカンドの守備で幾度となくゴールデングラブ賞を受賞してきた菊池は、守備範囲の広さと送球の正確さを兼ね備えた選手だ。特に二遊間の深い位置からの送球は芸術的で、フォームを崩しても正確に投げられるのは膨大な練習量の賜物だ。

甲斐拓也(ソフトバンクホークス)

「甲斐キャノン」の異名を持つ強肩捕手。盗塁阻止率は常にリーグトップクラスで、捕球からセカンドへの送球時間は1.8秒台を記録することもある。彼の送球の秘訣は、捕球の瞬間にすでに送球モーションに入っている「予備動作」の速さだ。

これらの選手に共通するのは、基本に忠実でありながらも、反復練習によって自分だけの「型」を確立していることだ。

送球練習でやりがちな間違いトップ5

多くの選手が無意識にやってしまう間違いを5つ挙げる。心当たりがあれば、すぐに改善に取り組もう。

1. キャッチボールを「ただの肩慣らし」にしている

キャッチボールは最も基本的な送球練習だ。にもかかわらず、多くの選手がウォームアップとしてダラダラと行っている。一球一球、正しいグリップ・ステップ・リリースを意識することで、キャッチボールの質は劇的に変わる。

2. 全力で投げることが「強い送球」だと思っている

送球の「強さ」はスピードだけではない。正確で相手が捕りやすい送球こそが本当に「強い送球」だ。全力で投げてもコントロールが定まらなければ意味がない。体全体を効率よく使えば、力感なく強い球が投げられるようになる。

3. 腕だけで投げている(手投げ)

下半身の動きを使わず、腕の力だけで投げてしまうパターン。これは肩や肘への負担が大きく、怪我のリスクも高い。ステップと体重移動を意識した送球フォームに矯正しよう。

4. 捕球と送球を別々の動作として考えている

捕球後に一度動作が止まってしまう選手は多い。守備のプレーは捕球から送球まで一連の動作だ。「流れ」を意識して、捕球の瞬間から次の送球動作に移れるよう練習する。

5. 練習で失敗を恐れて「安全な送球」しかしない

練習は失敗するための場所だ。ジャンピングスローや逆シングルからのスローなど、試合で必要になる難しいプレーを練習でこそ積極的にチャレンジするべきだ。失敗から学ぶことで、試合本番での対応力が身につく。

よくある質問(FAQ)

Q:送球が安定するまでどれくらいかかりますか?

A:基本フォームの習得には2~4週間、それを試合で安定して発揮できるようになるには2~3ヶ月が一般的な目安だ。ただし、毎日の練習の質と量によって大きく変わる。1日20~30分の集中した送球練習を続ければ、1ヶ月で明確な改善が見られるだろう。

Q:一人でできる送球練習はありますか?

A:壁当てが最も効果的だ。壁に的を付けて距離を測り、正確に投げる練習を繰り返す。また、タオルドリルは場所を選ばずにフォーム確認ができるため、自宅でも毎日取り組める。リバウンドネットがあれば、より実戦に近い形での一人練習が可能になる。

Q:送球時に肩や肘が痛くなるのですが、どうすればいいですか?

A:痛みがある場合は、まず練習を中止して安静にすることが最優先だ。フォームに問題がある可能性もあるため、コーチや指導者にフォームチェックを依頼しよう。チューブトレーニングによるインナーマッスルの強化と、股関節ストレッチによる柔軟性の確保が予防につながる。痛みが2週間以上続く場合は、必ず整形外科を受診すること。

Q:軟式と硬式で送球のコツは違いますか?

A:基本的なフォームは同じだが、ボールの特性が異なるため微調整が必要だ。軟式球は硬式球より軽く、バックスピンの効きが弱いため、やや高めにリリースする意識を持つとよい。硬式球はしっかりとバックスピンをかければボールが「伸びる」ので、4シームグリップの精度がより重要になる。

Q:子どもに送球を教えるとき、最初に何を教えるべきですか?

A:まずは正しいグリップと、ターゲットに向かってまっすぐステップすることの2点だ。複雑な理論は後回しにして、「ボールの握り方」と「足の向き」だけに集中させる。短い距離(5~8メートル)でのキャッチボールから始め、正しい形で投げられたら褒めて自信を持たせることが大切だ。

Q:ダブルプレーの送球がうまくいきません。コツはありますか?

A:ダブルプレーの送球は、ベースへの入り方と足の位置がカギだ。セカンドベースに入る際の右足の位置を毎回同じにすることで、送球の方向が安定する。また、捕球してからの持ち替えを素早くするために、クイックハンドドリルを重点的に行おう。練習では実際にベースを使い、何度もシミュレーションすることが上達への近道だ。

Q:女性や初心者でも送球は上達しますか?

A:もちろん上達する。送球は筋力だけではなく、フォームの正確さと体の連動が重要だ。正しいフォームを身につければ、小柄な選手や筋力が少ない選手でも十分に正確で力のある送球ができるようになる。最初は短い距離から始めて、自信を持って投げられる距離を少しずつ伸ばしていこう。

Q:送球練習は毎日やるべきですか?

A:キャッチボールレベルの送球練習は毎日行っても問題ない。ただし、全力での遠投や大量の送球練習は肩への負担が大きいため、週3~4回にとどめ、間に休息日を設けるべきだ。タオルドリルやシャドーでのフォーム確認は毎日行っても体への負担は少ないため、オフ日にも取り入れるとよい。

まとめ:送球上達への道

送球は、正しいフォーム・反復練習・メンタルの安定という3つの柱で成り立っている。このガイドで紹介した5ステップのフォーム、10のドリル、そしてフィジカルトレーニングを組み合わせれば、確実にレベルアップできる。

大切なのは、一球一球を丁寧に投げる意識を持つことだ。NPBの名手たちも、最初から完璧だったわけではない。地道な反復練習を通じて、自分だけの「確実な送球」を身につけてきた。あなたも今日から、キャッチボールの一球目を変えてみてほしい。グリップを確認し、ターゲットを見据え、ステップをまっすぐに。それだけで、送球は変わり始める。

著者

田中 健太

田中健太は元NPBマイナーリーグ選手で、現在は公認バッティングインストラクター。15年以上の野球経験を活かし、バッティング技術、ピッチング指導、野球用品のレビューを専門としています。高校野球から社会人野球まで幅広い選手の指導実績があります。

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