野球の素振り完全ガイド:正しいフォーム・練習ドリル10選・回数の目安・年代別メニューとNPB選手の実践法

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Last updated: 2026年3月15日

素振りは、日本の野球文化において最も基本的かつ重要な練習方法の一つだ。NPBのトップ打者から少年野球の選手まで、あらゆるレベルのプレーヤーが日々取り組んでいる。しかし、「ただバットを振るだけ」の素振りでは、上達にはつながらない。正しいフォーム、意識すべきポイント、そして効果的な練習メニューを理解してこそ、素振りは打撃力向上の最強ツールになる。

私はこれまで20年以上にわたって野球の指導と分析に携わってきた。NPBの現役選手やアマチュア選手の練習を間近で見てきた経験から、素振りの「質」がバッティングの結果に直結することを確信している。このガイドでは、初心者から上級者まで、素振りを最大限に活用するための完全なロードマップを提供する。

素振りとは何か:日本野球における素振りの位置づけ

素振り(すぶり)とは、ボールを打たずにバットを振る練習のことだ。英語では「dry swing」や「shadow swing」と訳されるが、日本野球における素振りの意味と重要性は、単なる「空振り練習」をはるかに超えている。

NPBの歴史を振り返ると、通算868本塁打の王貞治は毎日500回以上の素振りを行っていたと伝えられている。イチローも現役時代、毎朝の素振りをルーティンに組み込んでいた。2025年シーズンの村上宗隆もキャンプ中の素振りの量と質にこだわることで知られている。素振りは日本野球のDNAに深く刻まれた練習法なのだ。

素振りが効果的な理由は、反復によってスイングの動作パターンを筋肉に記憶させる「マッスルメモリー」の形成にある。研究によると、正しい動作を約300〜500回繰り返すことで、その動きが無意識レベルで再現できるようになるとされている。つまり、素振りは「考えなくても正しく振れる」状態を作る練習なのだ。

素振りに必要な道具と準備

素振りを始める前に、適切な道具と環境を準備しよう。最低限必要なものから、あると便利なアイテムまで整理する。

必須の道具:

  • バット:試合で使用するバットと同じ重さ・長さのものが基本。軟式ならSSK MM23ビヨンドマックス レガシーなどの実戦用バット、硬式なら木製バットが推奨される。
  • バッティンググローブ:マメの防止と正しいグリップ感覚の維持に必要。特に回数の多い素振りでは必須だ。
  • 安全なスペース:最低でもバットの長さ+1メートル四方の空間を確保する。天井の高さにも注意が必要だ。

あると便利な道具:

  • トレーニングバットアシックス カウンタースイングのようなトレーニング専用バットは、正しいスイング軌道を体に覚え込ませるのに効果的。
  • 鏡(全身鏡):フォームのセルフチェックに欠かせない。多くのNPB選手が自宅に全身鏡を設置している。
  • スマートフォン(動画撮影用):自分のスイングを撮影してスロー再生で確認する。スイング分析アプリを併用するとさらに効果的。
  • 重いバット・マスコットバット:筋力強化とスイングスピード向上のために、通常より200〜300g重いバットを使う場面もある。
  • タオル:タオル素振りは初心者のフォーム作りに非常に有効。手首の使い方やヘッドの走りを感じやすい。

素振りの正しいフォーム:ステップバイステップガイド

素振りで最も重要なのは、正しいフォームで一振り一振りを丁寧に行うことだ。以下の手順に沿って、基本フォームを確認しよう。

ステップ1:構え(スタンス)

足を肩幅よりやや広めに開き、つま先をやや内側に向ける。膝は軽く曲げ、重心は両足の母指球(親指の付け根)に均等に乗せる。バッティングフォームの基本と同じだが、素振りでは特に「再現性」を意識することが大切だ。毎回同じ構えから始めることで、試合でも安定したスイングができるようになる。

ステップ2:グリップ

バットは指の付け根(ナックルライン)で握る。右打者の場合、右手のナックルと左手のナックルが一直線になるように握る。握る強さは「卵を握る程度」と表現されることが多いが、実際にはインパクトの瞬間だけ強く握り込むのがポイントだ。構えの段階では力を入れすぎないこと。

ステップ3:テイクバック

バットを後方に引く動作。トップの位置は、後ろ肩の上あたりが基本だ。このとき、後ろ足に体重を6〜7割乗せる。テイクバックが大きすぎるとスイングが遅れる原因になり、小さすぎるとパワーが出ない。自分のタイミングで最も力を伝えやすい位置を素振りの中で見つけていこう。

ステップ4:ステップ(踏み込み)

前足を投手方向に踏み出す。ステップ幅は構えた足幅から10〜15cm程度が目安。つま先は投手方向ではなく、やや閉じ気味にするとパワーが逃げにくい。ステップと同時に体重移動が始まるが、このとき上半身はまだ後ろに残っている状態が理想だ。「下半身リード」と呼ばれるこの動きは、下半身トレーニングで強化できる。

ステップ5:スイング(バットを振る)

腰の回転から始まり、体幹、肩、腕、そしてバットヘッドへとエネルギーが伝わる「運動連鎖」を意識する。バットは最短距離でインパクトポイントに到達させる。いわゆる「インサイドアウト」のスイング軌道だ。スイングスピードを上げるためにも、この運動連鎖の効率を素振りで磨くことが重要になる。

ステップ6:フォロースルー

インパクト後、バットを振り抜く動作。フォロースルーが小さいと飛距離が出ない。バットが体に巻きつくように、大きく振り抜くことを意識する。素振りでフォロースルーまでしっかり完結させることで、試合でも最後まで振り切れるスイングが身につく。

ステップ7:フィニッシュ

スイング後のバランスを確認する。フィニッシュの形が安定していれば、スイング全体のバランスが良い証拠だ。片足で立ってもぐらつかないフィニッシュが理想。NPBの一流打者のスイングを見ると、フィニッシュの形が毎回ほぼ同じであることに気づくだろう。

素振りの回数と頻度:レベル別の推奨メニュー

「何回振ればいいのか?」は最もよくある質問だ。結論から言えば、回数よりも質が重要だが、目安となる数字は知っておきたい。

レベル1日の推奨回数頻度1セットの回数セット間の休憩ポイント
小学生(低学年)50〜100回週4〜5日10〜15回1〜2分フォームの正確性を最優先
小学生(高学年)100〜200回週5〜6日15〜20回1〜2分コース別の打ち分け意識
中学生200〜300回週5〜6日20〜30回1分タイミング・体重移動を強化
高校生300〜500回毎日30〜50回30秒〜1分実戦を想定した配球対応
大学・社会人200〜400回毎日30〜50回30秒〜1分課題に応じた集中素振り
NPBプロ100〜300回毎日自由自由感覚調整・ルーティンとして

重要なのは、疲れてフォームが崩れる前に休憩を取ることだ。フォームが崩れた状態での素振りは、悪い癖を身体に覚え込ませてしまう逆効果になる。「もう1セット」と無理するよりも、フォームが維持できる回数で切り上げる方が上達は早い。

素振りで意識すべき5つのポイント

ただ漫然とバットを振るだけでは、素振りの効果は半減する。以下の5つのポイントを常に意識しよう。

1. 投手をイメージする

素振りの最大のコツは「実戦の想像力」だ。目の前に投手がいて、実際にボールが投げ込まれてくる場面を鮮明にイメージする。「右投手の140km/hストレートがインコース高めに来た」「左投手のスライダーがアウトコース低めに逃げていく」など、具体的な状況を設定する。このメンタルリハーサルの効果は、スポーツ心理学の研究でも実証されている。

2. コースを打ち分ける

インコース、アウトコース、真ん中。高め、低め。9つのゾーンに対して、それぞれ最適なスイング軌道がある。素振りでは、1セットごとにコースを変えて練習するのが効果的だ。例えば「このセットはインコース低め」「次のセットはアウトコース高め」といった具合に明確に設定する。

3. スイングスピードを意識する

素振りでは、全力スイングとフォーム確認のスイングを使い分ける。最初の数セットはゆっくりとフォーム確認をしながら振り、体が温まってきたら徐々にスピードを上げる。全力スイングの際は、風を切る「ビュッ」という音がインパクトポイント(体の前方)で鳴るようにする。トップの位置で音が鳴る場合は、ヘッドが早く出すぎている証拠だ。

4. 体重移動を感じる

後ろ足から前足への体重移動は、パワーの源だ。素振りの一振りごとに、体重が後ろ足の内側から前足の内側へ移動する感覚を確認する。体幹トレーニングで培った安定性が、この体重移動の精度を高めてくれる。

5. 打球の行方をイメージする

インパクト後、ボールがどこに飛んでいくかまでイメージすることで、素振りの質は格段に上がる。「センター前に鋭いライナー」「レフトスタンドへの放物線」など、打球の軌道まで想像する。この習慣は、試合でのバットコントロールと方向性の向上に直結する。

素振りの種類と練習ドリル10選

素振りにはさまざまなバリエーションがある。目的に応じて使い分けることで、打撃の総合力を効率的に高められる。

ドリル1:基本素振り

通常のスタンスから、フルスイングする最もオーソドックスな素振り。フォームの確認と維持が目的。1セット20〜30回を3〜5セット行う。全ての素振りドリルの土台となる。

ドリル2:スロースイング素振り

通常の半分以下のスピードでゆっくり振る。構えからフィニッシュまで5〜8秒かけて行う。各段階でのバットの位置、体の角度、重心の位置を確認しながら進める。フォーム修正や新しい動きを身につけるときに最適だ。1セット10回を2〜3セット。

ドリル3:片手素振り

引き手(右打者の左手)だけ、押し手(右打者の右手)だけでそれぞれ素振りを行う。引き手素振りはバットの操作性とヘッドの走りを高め、押し手素振りはパワーの伝達とインパクトの強さを鍛える。軽いバットまたは短いバットで行うと安全に練習できる。各手10〜15回を2セット。

ドリル4:置きティー想定素振り

ティーバッティングのように、決まった高さ・コースにボールがあるイメージで振る。ティースタンドがなくても、高さとコースを具体的に設定することで同様の効果が得られる。インコース高め、アウトコース低めなど、苦手コースを集中的に練習する。1コース15〜20回。

ドリル5:重いバット素振り

マスコットバットや通常より200〜400g重いバットで素振りを行う。筋力強化とスイングに必要な筋肉の動員パターンを強化する。ただし、重すぎるバットはフォームを崩す原因になるので注意が必要だ。1セット10〜15回を2〜3セット。重いバットの後に通常のバットで振ると、バットが軽く感じてスイングスピードの向上を実感できる。

ドリル6:軽いバット(高速スイング)素振り

通常より100〜200g軽いバットや、竹バットなどで全力の最高速スイングを行う。神経系の活性化とスイングスピードの限界値を引き上げる効果がある。1セット8〜10回を3セット。フォームが崩れないギリギリのスピードを追求する。

ドリル7:タオル素振り

フェイスタオルの先端を結び、バットの代わりに握って振る。バットの重さがないため、腕の力に頼らず体全体を使ったスイングを身につけるのに効果的だ。初心者やフォームが崩れてきたときの「リセット」にも有効。手首のスナップとヘッドの走りを感じるドリルとしても優秀。1セット20回を3セット。

ドリル8:連続スイング素振り

構えに戻る時間を最小限にして、テンポよく連続でスイングする。1セット30秒間、できるだけ多くのスイングを行う。持久力の強化と、試合後半でもスイングが衰えない体力を養う。3〜5セット、セット間は1分休憩。

ドリル9:逆方向打ち素振り

右打者ならライト方向、左打者ならレフト方向への打球をイメージして素振りする。インサイドアウトのスイング軌道と、ボールをギリギリまで引きつける感覚を養う。逆方向打ちができる打者は、変化球への対応力が格段に高くなる。1セット15〜20回を2〜3セット。

ドリル10:カウント別シミュレーション素振り

実際の打席を想定して、カウントに応じたスイングを行う。初球(0-0)の積極的なスイング、追い込まれてから(0-2、1-2)のコンパクトなスイング、打者有利(2-0、3-1)のフルスイングなど、状況に応じた切り替えを練習する。10打席分のシミュレーションを1セットとし、2〜3セット行う。

素振りでよくある間違いと修正法

素振りで陥りがちな間違いは、放置すると試合で悪い癖として出てしまう。以下の表で自分のスイングをチェックしよう。

よくある間違い原因見分け方修正法
腕だけで振っている体幹・下半身の連動不足フィニッシュで後ろ足が動かないタオル素振りで体の回転を意識。下半身主導のスイングを体に覚え込ませる
ヘッドが下がる(ドアスイング)グリップの位置が低い、または手首が早くほどけるスイング軌道が遠回りになる壁際に立ち、壁にバットが当たらないように振る練習で最短距離を習得
突っ込み(体が前に流れる)体重移動のタイミングが早すぎるフィニッシュで前足に体重が乗りすぎ、後ろに戻れない後ろ足の内側で「壁」を作る意識。ステップ後に一瞬止まるドリルを行う
アッパースイングが過剰下からすくい上げる意識が強すぎるボールの下を空振りしやすい、ポップフライが多いレベルスイングの素振りに戻す。「上から叩く」のではなく、水平に振る意識で
バットを握りすぎている緊張や力み手首が固く、ヘッドが走らない構えでは「卵を握る」程度に。インパクトの瞬間だけ握り込む練習をする
目線がブレる頭が大きく動いているスイング中に景色が揺れる感覚がある素振り中に特定の点を見つめ、頭の位置を固定する。頭の上にペットボトルを乗せる練習も有効
フォロースルーが小さいインパクトで力を緩めている振り終わりでバットが体から離れない「バットを放り投げるつもり」で大きく振り抜く意識を持つ
毎回フォームが異なる基本フォームが固まっていない動画で確認すると毎回違う形になっているスロースイング素振りで基本に立ち戻り、1つずつ動作を確認する

NPB選手に学ぶ素振りのコツと哲学

NPBのトップ打者たちは、素振りに対して独自の哲学を持っている。彼らのアプローチから、私たちが学べることは多い。

岡本和真(読売ジャイアンツ)は、キャンプ中に毎日300回以上の素振りを行うことで知られている。岡本の素振りの特徴は、一振り一振りにフルスイングのエネルギーを込めること。「素振りで手を抜いたら、試合でも手を抜いたスイングになる」という考え方だ。

ソフトバンクホークスの山川穂高は、素振りの際に実際の投手をイメージすることにこだわっている。次の対戦相手の投手の映像を見た後に素振りを行い、その投手の球筋に合わせたスイングを練習する。このメンタルリハーサルの積み重ねが、打率と本塁打数の安定につながっている。

大谷翔平も高校時代、花巻東高校で毎日数百回の素振りを行っていたことは有名だ。大谷の素振りは「一球一球に試合と同じ集中力を注ぐ」スタイルで、回数よりも質を重視するアプローチ。結果として、MLBでも世界最高峰のスイングを維持している。

年代別・目的別の素振り練習メニュー

年代や目的に応じて、素振りの練習メニューは変える必要がある。以下に具体的なメニュー例を示す。

小学生向けメニュー(所要時間:約15分)

  1. タオル素振り 10回×2セット(ウォームアップ)
  2. スロースイング素振り 5回(フォーム確認)
  3. 基本素振り 15回×3セット(インコース・真ん中・アウトコースを1セットずつ)
  4. 好きなコースで全力スイング 5回(仕上げ)

中学生向けメニュー(所要時間:約25分)

  1. スロースイング素振り 10回(フォーム確認)
  2. 基本素振り 20回×3セット(コース別)
  3. 片手素振り 各手10回×2セット
  4. 逆方向打ち素振り 15回×2セット
  5. 連続スイング素振り 30秒×2セット
  6. 重いバット素振り 10回×2セット

高校生・大学生向けメニュー(所要時間:約40分)

  1. スロースイング素振り 10回(フォーム確認とウォームアップ)
  2. 基本素振り 30回×3セット(高め・真ん中・低め)
  3. コース別素振り 20回×3セット(インコース・真ん中・アウトコース)
  4. 片手素振り 各手15回×2セット
  5. 重いバット素振り 15回×3セット
  6. 軽いバット高速素振り 10回×3セット
  7. カウント別シミュレーション 10打席×2セット
  8. 逆方向打ち素振り 20回×2セット

上級者のための素振りテクニック

基本をマスターした上級者向けに、さらにレベルアップするための素振りテクニックを紹介する。

変化球対応素振り

ストレートだけでなく、変化球を想定した素振りも取り入れよう。カーブの場合はトップの位置で一瞬「間」を作り、ボールの変化に合わせたタイミングで振る。スライダーは体の開きを抑えて逆方向に打つイメージ。バッティングセンターで実際の変化球を打つ前に、素振りでタイミングを調整しておくと効果的だ。

目を閉じた素振り

目を閉じて素振りを行うと、体の動きに集中できる。視覚情報に頼らず、体のバランスや筋肉の使い方を感じ取る練習だ。フィニッシュの安定性が向上し、体のブレを発見しやすくなる。安全な場所で、1セット5〜10回から始めよう。

バランスボール上での素振り

バランスボールやバランスディスクの上に立って素振りを行う。不安定な足場での素振りは、体幹の安定性とバランス感覚を飛躍的に高める。ただし、転倒リスクがあるため、軽いバットから始め、周囲に十分なスペースを確保すること。

映像分析との組み合わせ

自分の素振りを動画撮影し、NPBの一流打者のスイングと比較する。スロー再生で各段階を確認し、改善点を特定してから再び素振りに戻る。このPDCAサイクルを回すことで、素振りの効果は最大化される。スイング分析アプリを使えば、スイングスピードやバットの角度を数値化できる。

対左・対右の切り替え素振り

右投手と左投手では、ボールの見え方や変化球の曲がり方が異なる。素振りでも、「今は右投手のインコースストレート」「次は左投手のアウトコースチェンジアップ」と、投手の左右を切り替えながら行う。この練習により、試合での対応力が大幅に向上する。

素振りを効果的にする環境と習慣づくり

素振りの効果を最大限に引き出すには、練習環境と習慣化が鍵になる。

練習場所の選び方

自宅の庭やガレージが理想的だが、室内でも可能だ。天井の高さはバットを構えた高さ+50cm以上必要。周囲の壁や家具からは、バットの長さ+30cm以上離れること。マンションなど集合住宅の場合は、階下への振動にも配慮が必要だ。屋外の場合は、人が通らない安全な場所を選ぶ。

素振りを習慣にするコツ

「毎日やる」と決めても、続かないのが人間だ。習慣化のコツは以下の3つ。

  • 時間を固定する:朝食前、学校から帰宅後、入浴前など、既存の習慣に紐づける。「歯を磨いたら素振り」のように、トリガーを設定するのが有効。
  • 最初のハードルを下げる:「毎日300回」ではなく、「まず10回振る」から始める。バットを手に取る動作をルーティンに組み込めば、10回が20回、50回と自然に増えていく。
  • 記録をつける:素振りの回数、気づいたこと、調子を日記や手帳に記録する。可視化することでモチベーションが維持できる。

ウォームアップとクールダウン

素振り前には必ず肩周り、腰回り、手首のストレッチを行う。股関節のストレッチも重要だ。冷えた体でいきなり全力スイングすると、肩や手首を痛める原因になる。素振り後は、使った筋肉を軽くストレッチして疲労を溜めないようにしよう。

素振りと組み合わせるべき練習

素振りは単体でも効果的だが、他の練習と組み合わせることで相乗効果が生まれる。

ティーバッティングとの組み合わせ

素振りでフォームを確認した後、ティーバッティングで実際にボールを打つ。素振りで意識したポイントを、ボールありの状況で再現できるか確認する。「素振り→ティー→素振り」のサイクルを繰り返すことで、フォームの定着が加速する。

筋力トレーニングとの組み合わせ

素振りの前に軽い筋トレを行うと、筋肉が活性化された状態でスイングできる。特に体幹トレーニング下半身トレーニングは、スイングの土台を強化する。ただし、高強度の筋トレの直後はフォームが崩れやすいので、軽い負荷に留めること。

映像学習との組み合わせ

NPBやMLBの試合映像で、理想の打者のスイングを観察してから素振りを行う。視覚的なイメージが鮮明な状態で素振りをすることで、そのスイングに近づきやすくなる。特に大谷翔平やNPBの一流打者の構え・テイクバック・フォロースルーを参考にすると良い。

季節別・シーズン別の素振り戦略

素振りの量と質は、シーズンの時期によって調整するのが効果的だ。

オフシーズン(11月〜1月)

フォームの改造や新しい技術の習得に最適な時期。回数を多めにして、スロースイングやフォーム確認素振りの割合を増やす。重いバットを使った筋力強化素振りも取り入れる。この時期に基盤を固めておくことが、春からの成績に直結する。

春季キャンプ・プレシーズン(2月〜3月)

実戦モードへの切り替え期間。基本素振りの割合を増やし、コース別・変化球対応の素振りを強化する。カウント別シミュレーションも積極的に取り入れて、試合感覚を養う。

シーズン中(4月〜10月)

フォームの維持と微調整が目的。試合前のルーティンとしての素振り、試合後の修正素振りが中心になる。量よりも質を重視し、その日の対戦投手に合わせた素振りを行う。疲労管理も重要なので、素振りの回数は控えめにする。

秋季練習(10月〜11月)

シーズンの反省を活かし、翌年に向けた改善点を洗い出す時期。素振りで新しいアプローチを試す「実験」の期間として活用する。失敗を恐れず、さまざまなスイングを試すことが翌シーズンの成長につながる。

よくある質問(FAQ)

Q: 素振りは毎日やるべきですか?

A: 理想的には毎日行うのが望ましいが、体の疲労度に応じて調整しよう。筋肉痛がひどい日や試合後の疲労が残っている日は、回数を減らすか、スロースイング素振りだけにする。休息も練習の一部だ。

Q: 素振りの効果が出るまでどのくらいかかりますか?

A: 正しいフォームでの素振りを継続した場合、2〜3週間でスイングの安定性が向上し始める。打撃成績に明確な変化が表れるのは1〜2ヶ月後が目安だ。ただし、これは「質の高い素振り」を継続した場合であり、漫然と振っているだけでは効果は出にくい。

Q: 室内で素振りをしても効果はありますか?

A: 十分な効果がある。多くのNPB選手も自宅の室内で素振りを行っている。天井や壁にバットがぶつからない安全なスペースを確保し、鏡の前で行えば屋外と同等以上の練習効果が期待できる。スペースが限られる場合は、短いトレーニングバットやタオル素振りを活用しよう。

Q: 子供の素振りでやってはいけないことは何ですか?

A: 最も避けるべきは「回数のノルマを課すこと」だ。「500回振るまで帰れない」といった指導は、フォームが崩れた状態での練習を強制することになり、悪い癖の定着や怪我のリスクを高める。小学生は質の高い50回の方が、ダラダラした500回よりもはるかに効果的だ。

Q: 試合用のバットと練習用のバットは分けるべきですか?

A: 基本的には試合用と同じバットで素振りをするのが望ましい。重さ、長さ、バランスの感覚を体に覚え込ませるためだ。ただし、バットの消耗を考えると、同じモデル・同じスペックの練習用バットを用意するのも合理的だ。トレーニングバット(重いバット、軽いバットなど)は目的別に使い分ける。

Q: 左右両打ちの素振りはやったほうがいいですか?

A: スイッチヒッターを目指すのでなければ、必須ではない。ただし、逆側の素振りは体のバランス矯正や、打席での新しい気づきにつながることがある。メインの打席方向の練習を十分に行った上で、余裕があれば逆打席の素振りを取り入れてみるのも良い。

Q: 素振りで手にマメができるのは正常ですか?

A: 練習を始めた初期はマメができるのは自然なことだ。しかし、慢性的にマメができる場合は、グリップの握り方に問題がある可能性がある。指の付け根で握る正しいグリップを確認し、バッティンググローブを着用しよう。また、バットのグリップテープの状態も定期的にチェックしたい。

Q: 雨の日でも素振りはできますか?

A: 室内であれば天候に関係なく練習可能だ。タオル素振りや短いバットを使えば、限られたスペースでも十分な練習ができる。むしろ雨の日をチャンスと捉えて、フォーム確認やスロースイング素振りに集中する日にするのがおすすめだ。

まとめ:素振りで打撃を変える

素振りは、最もシンプルでありながら最も奥が深い野球の練習法だ。バット1本と少しのスペースさえあれば、いつでもどこでもできる。そして、正しく行えば、確実に打撃力を向上させてくれる。

このガイドで紹介したポイントを振り返ろう。

  • 素振りは「量」より「質」が重要。フォームが崩れる前に休憩を取る
  • 投手やコースを具体的にイメージしながら振る
  • 10種類のドリルを目的に応じて使い分ける
  • よくある間違いを早期に発見し、修正する
  • 年代やシーズンに合わせてメニューを調整する
  • 他の練習と組み合わせて相乗効果を狙う
  • 習慣化することで、長期的な成長につなげる

王貞治、イチロー、大谷翔平。日本野球が世界に誇る偉大な打者たちは、全員が素振りの重要性を語っている。今日から、一振り一振りに魂を込めた素振りを始めよう。あなたの打撃が変わるのは、次の一振りからだ。

著者

田中 健太

田中健太は元NPBマイナーリーグ選手で、現在は公認バッティングインストラクター。15年以上の野球経験を活かし、バッティング技術、ピッチング指導、野球用品のレビューを専門としています。高校野球から社会人野球まで幅広い選手の指導実績があります。

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